こんにちは、マサキ工房です。
21年間のリフォーム営業と工務5年の経験をもとに、「住まいのリフォームに関する悩みや疑問を解決する記事(情報)」をお届けしているブログです。【2016年11月~小さな工務店を経営】
外壁塗装で失敗しないためには、「水性と油性」・「1液と2液」塗料の違いや特徴を理解しておくことが重要です。
(悪徳業者も含め)ほぼすべての塗装業者が、「この塗料が一番良いですよ!」とすすめてくるからです。
僕はこれまで、外壁塗装の見積もりを2,000件以上作成(商談)して、そのうち1,200軒以上の契約・完工を経験してきました。
「水性と油性」・「1液と2液」塗料の違いがまったく分からないと、「どの塗料が我が家に最適なのか?」を予測するのは難しいです。
最悪の場合、悪徳業者の「言いなり」になってしまう可能性もあります。
逆に言うと、基本的な塗料の違いや特徴さえ理解しておけば、塗装業者の話を理解しやすくなるだけでなく、悪徳業者の「言いなり」になる可能性も低くなるはずです。
この記事では、「水性と油性」・「1液と2液」塗料の違いや特徴について解説しています。
記事を読むことで、塗料の耐用年数の”予測”や塗装業者の見積書の”説明”が分かりやすくなります。
外壁塗装の業者選びの際、(悪徳業者対策という意味でも)ぜひ記事の内容を参考にしてみてください。
水性塗料と油性塗料の違い
「水性と油性」塗料では、希釈する溶剤が違います。
「希釈」とは薄めるという意味で、「溶剤」とは固体を溶かすための液体のことです。
「水性塗料」は水、「油性塗料」であればシンナーなどの有機溶剤(石油系の液体)で薄めて使用します。
- 水性塗料 → 水でうすめる
- 油性塗料 → シンナーなどの有機溶剤でうすめる
また、「油性塗料」には弱溶剤と強溶剤の2種類がありますが、溶剤(シンナー)は以下のように分類されます。
- 弱溶剤 → 塗料用シンナー(ペイントうすめ液)
- 強溶剤 → ラッカー・ウレタン・エポキシシンナー等
「強溶剤」系の油性塗料は、高耐久で塗装の仕上がりも美しいのですが、ニオイがきつく人体にもあまり良くないため、戸建て住宅で使用される機会は少ないです。
*大型建造物・公共施設等の高耐久を重視する塗装工事ではよく使用されます。
そのため、戸建住宅の外壁塗装工事では、水性塗料もしくは塗料用シンナーで希釈する「弱溶剤系」の油性塗料を使用するケースが大半です。
<戸建住宅で使用するおもな塗料>
水性塗料 → 水で希釈して使用する
油性塗料 → 塗料用シンナーなどで希釈して使用する(弱溶剤系)
1液と2液タイプの塗料の違い
「水性と油性」塗料には1液と2液タイプがあります。
塗装業者とのやりとりや見積書には、この「1液と2液」という言葉(文字)が頻繁に使用されるため理解しておいたほうが良いです。
1液タイプの水性・油性塗料
「1液タイプの水性・油性塗料」は、以下のとおりです。
水性塗料(1液)→ 主剤+水
油性塗料(1液)→ 主剤+塗料用シンナー
どちらも主剤(塗料缶)を、水もしくは塗料用シンナーで薄めて使用します。
つまり、1種類の液体(塗料)を希釈して使用するので1液タイプです。
希釈率とは?
「希釈率(きしゃくりつ)」とは、(メーカーが定めた)塗料を薄めてもよい割合のことです。塗装工事では、希釈率の範囲内で塗料を薄めて施工するのが絶対条件になります。
塗料の希釈率(薄める割合)は、製品によってそれぞれ異なりますが塗料缶に「%で記載」してあります。
たとえば、塗料缶に希釈率0~5%と記載してあれば
1L = (1,000ml)になるため → (1,000ml)の5% = 50mlとなります。
1L=(1,000ml)に対して「水や塗料用シンナーで薄めても良い範囲(0~5%)は0~50mlまで」、ということになります。
2液タイプの水性・油性塗料
「2液タイプの水性・油性塗料」は、以下のとおりです。
水性塗料(2液)→ 主剤+硬化剤+水
油性塗料(2液)→ 主剤+硬化剤+塗料用シンナー
どちらも「主剤と硬化剤」を、水もしくは塗料用シンナーで薄めて使用します。
こちらは、2種類の液体(塗料)を希釈して使用するので2液タイプです。
2液タイプの希釈率に関しては、以前現場で使用した塗料缶(画像)がありますのでご紹介します。
下記(画像)は、以前現場で使用した日本ペイントの2液タイプの油性シリコン塗料「ファインシリコンフレッシュ」です。
<左から主剤(塗料)→ 硬化剤 → 塗料用シンナーA>
油性塗料の希釈率は、塗料缶に記載してあります。
「ファインシリコンフレッシュ」の場合、(主剤: 硬化剤)の割合は5:1です。
主剤と硬化剤を5:1の割合でかくはんした(混ぜた)ものを、塗料用シンナーAで希釈して使用します。
塗料用シンナーAで薄めてよい限界値(希釈率)は、記載事項をまとめると以下の通りです。
0~10%以内
はけ・ローラー塗りの場合 →5~10%以内
エアスプレー(吹付)塗り場合 →上記のように、2液タイプの塗料は「主剤:硬化剤」の割合と「希釈率」が塗料缶に記載してあります。
手抜き工事では、塗料本来の機能を発揮することができないため、(特に)格安すぎる業者には注意してください。
希釈率を守らず薄めすぎて使用する(関連記事)
2液タイプの水性塗料を使用する機会は少ない?
水性2液タイプの塗料については、戸建住宅に使用する機会は少ないと言えます。
日本ペイントの製品では、「アプラウドシェラスターNEO(無機塗料)」が(主剤+硬化剤+水)で使用する2液タイプの水性塗料です。
そのため、戸建て住宅の外壁塗装で主流となる塗料は、以下3つのタイプです。
- 水性塗料(1液)→主剤を水で希釈して使用
- 油性塗料(1液)→主剤を塗料用シンナーで希釈して使用
- 油性塗料(2液)→主剤と硬化剤を塗料用シンナーで希釈して使用
上記3タイプの塗料を理解しておけば、業者とのやりとりや見積書の確認は問題ありません。
また、塗料価格の高い順に並べると【 油性(2液)>油性(1液)>水性(1液)】となるのが一般的です。
(関連記事)
水性塗料より油性塗料のほうが耐久性は高い!
基本的には、水性より油性塗料のほうが耐久性は高くなります。
油性塗料のほうが、水性よりも塗膜が強い(硬い)からです。
そのため、塗料のタイプ別に耐久性を比べると、以下のようになります。
油性塗料(2液)> 油性塗料(1液)> 水性塗料(1液)
上記のように、油性塗料(2液)がいちばん耐久性は高く、水性塗料(1液)と比べると約3~4年くらいは長持ちします。
下記は、塗料と耐用年数についてまとめた表です。
塗料 | 耐用年数 |
アクリル | 3~5年 |
ウレタン | 5~8年 |
シリコン | 8~12年 |
ラジカル | 13~15年 |
フッ素 | 15~18年 |
無機 | 18~20年 |
たとえば、上記の表にあるシリコン塗料は耐用年数が8~12年です。
同じシリコン塗料の場合で比べると、耐用年数は以下のようになります。
- 油性シリコン(2液)→約12年前後
- 油性シリコン(1液)→約10~12年
- 水性シリコン(1液)→約8~10年
立地条件などにもよりますが、上記のように耐用年数には8~12年と4年の差がでます。
つまり、「シリコン塗装」という場合でも、「水性・油性」塗料と「1液もしくは2液」タイプによって、耐用年数に差がでるという訳です。
見積書を比較する際、参考にしてみてください。
水性塗料は耐用年数が長くなった?
水性塗料は、以前にくらべ「耐用年数が長くなった」と実感している塗装業のかたが多いようです。(2021年5月時点)
僕自身も、実際に塗装した現場を見ながら「水性塗料も長持ちするようになったな」と感じています。
これは、国際的に広がっているVOC削減への取り組みをうけ、各塗料メーカーが人体への影響や環境保全を考慮し、水性塗料の技術向上に力を入れていることが主な要因だと思います。
そのため、排出規制が始まった2006年頃以降に発売された水性塗料に関しては、「耐用年数が長くなった」と感じている業者が多いはずです。
しかし、「油性塗料を超える耐久性」とまでは言い切れません。
同じ樹脂の塗料であれば
油性塗料(1液)≧ 水性塗料(1液)
もしくは塗料次第で
油性塗料(1液)= 水性塗料(1液)
というのが現実だと思います。
とにかく”耐用年数重視”というかたは、「水性・油性塗料(1液)」よりも「2液タイプの油性塗料」を選ぶほうが賢明です。
このように、基本的には「水性よりも油性」塗料・「1液よりも2液」タイプのほうが耐久性は高いです。
そのため、「保証期間」が同じ年数の場合でも、”保証内容が違う”というケースは珍しくありません。
「水性・油性」塗料と「1液・2液」タイプを確認したうえで、保証内容にも十分注意してください。
(関連記事)
水性塗料のメリット・デメリット
「水性塗料」には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?
水性塗料のメリット
「水性塗料のメリット」は、おもに以下の7つです。
- 刷毛やペン缶などの片付けが簡単
- ニオイが少ない(周囲に迷惑がかからない)
- 環境にやさしい(人畜無害)
- 密閉しておけば塗料が固まらないため使い回しできる
- 燃えにくいため保管しやすい
- 油性よりも価格が安め
- 気温が安定していれば油性よりも工期が短い(混ぜる作業が楽なため)
上記のように、水性塗料はお客様だけでなく作業する職人にとってもプラスになる要素が多いです。
(前述した)「油性塗料よりも耐用年数が短めになる」ということを理解したうえで施工するのであれば、水性塗料は最適と言えます。
「水性塗料を勧める塗装業者が多い」、というのも納得していただけると思います。
水性塗料のデメリット
「水性塗料のデメリット」は、以下の6つです。
- 気温や湿度(季節)によって乾燥時間が変わる
- 油性塗料より艶(つや)がでない
- 油性塗料より平骨性・機能性が低い
- 鉄部には不向き
- 気温5℃以下では乾きにくい
- 濃い目の色に限界がある
、気温が5℃以下になる季節の施工です。
水性塗料を使用する場合、とくに注意しないといけないのは大半の水性塗料は、気温5℃以下では乾燥しにくくなるため、次の工程にスムーズに進むことができません。
そのため、どうしても工期が長引いてしまいます。
寒い季節に塗装工事を行うかたは、「気温5℃以下で施工しても問題ない塗料なのか?」をよく確認しておきましょう。
(水性タイプの多い)下塗りの乾燥時間にも注意してください。
油性塗料のメリット・デメリット
「油性塗料」には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。
油性塗料のメリット
「油性塗料のメリット」は、おもに以下の5つです。
- 密着性が高いため剥げにくい
- 水性塗料よりも耐久性に優れている
- 乾燥時間が一定している(冬場の施工も問題ない)
- 鉄部には水性より油性塗料のほうが錆びにくい
- 光沢保持率が長い
「油性塗料」は、高耐久というのはもちろんですが、気温が5℃以下になりやすい冬場でも工期に影響が少ない、というのが一番のメリットです。
また、「鉄部の塗装」には水性より錆びにくい油性塗料の施工をおすすめします。
油性塗料のデメリット
「油性塗料のデメリット」は、おもに以下の7つです。
- シンナー臭がする
- 人体への影響(頭痛やめまい等)
- 塗料のかくはん(混ぜる)作業に手間がかかる
- 水性塗料より引火性が高いため保管に注意が必要
- 作業時に保護具が必要
- 道具を洗うのに強いシンナーを使う
- 水性塗料より少し金額が高い
油性塗料の一番のデメリットは、シンナー臭がすることです。
人によっては、頭痛やめまいなどの症状を起こすケースもごく稀にあります。
どうしても”石油系のニオイが苦手“なかたは、よく検討したほうが良いと思います。
また、「どのくらいの期間シンナーのにおいが続くの?」とよく質問されますが、塗料が乾燥してしまうと臭いはなくなりますので安心してください。
工事期間中は、塗装してから乾くまでの時間(2~5時間くらい)はシンナーのにおいがしますが、工事完了の翌日にはほとんどなくなります。
最後に:水性OR油性?おすすめの選び方をご紹介!
「水性と油性」塗料の違いや特徴について解説させていただきました。
塗装業者や塗料を検討する際、参考にして頂けると幸いです。
こんな方には水性塗料がおすすめ
シンナー臭(石油系のにおい)が苦手
きるだけ予算をかけたくない(耐用年数は樹脂で判断)
近隣に家がたくさんある(密集地)
気温5℃以上(春・夏・秋)の季節に塗装する
こんな方には油性塗料がおすすめ
シンナー臭は大丈夫(昼間は仕事で不在等)
確実に目安となる耐用年数は長持ちしてほしい
近隣に家が少ない(離れている)
とにかく耐久性が高い方が良い(2液の油性塗料)
夏場は暑さをしのぐため、”エアコンを使用する“かたが多いと思います。
しかし、大半のかたはエアコンだけでなく扇風機や窓を開けたいというのが本音です。
ご近所のかたが窓を開けた際、シンナー臭が漂うとあまり良い気はしないことでしょう。
油性塗料を使用する場合は、シンナー臭がすることを事前にご近所のかたへお伝え(ご挨拶)しておきましょう。
しない業者も少なくないため注意してください。
(大半の塗装業者は)工事前のご挨拶をしてくれると思いますが、ご近所への配慮をまったく(ご近所の在宅状況も考慮したうえで)「水性と油性」塗料を検討すれば、きっと工事期間中にトラブルのない良い工事になると思います。
最後まで記事を読んでいただき、ありがとうございました。