こんにちは、マサキ工房です。
21年間のリフォーム営業と工務5年の経験をもとに、「住まいのリフォームに関する悩みや疑問を解決する記事(情報)」をお届けしているブログです。【2016年11月~小さな工務店を経営】
塗装業者から「下塗りなしの外壁塗装」を見積もりされた場合、以下のような気持ちになりませんか?
- 下塗りなしの塗装で本当に大丈夫?
- 安くできると言われたけど本当?
- 「依頼しようかな?」と思っているけど不安
「下塗りなしの外壁塗装」とは、3回塗りではなく2回塗りの外壁塗装のことで「シーラーレス」と呼ばれる工法です。
僕はこれまで2,000件以上の外壁塗装の見積もり(商談)を経験してきましたが、「下塗りなし(シーラーレス)の外壁塗装」はあまりおすすめしません。
費用を安くすることはできますが、”不安要素”も少なくないからです。
この記事では、「下塗りなし(シーラーレス)」の外壁塗装について解説しています。
記事を読むことで、「おすすめしない理由」や「検討する際の注意点・対処法」が分かります。
外壁塗装の見積もりを依頼する際、ぜひ記事の内容を参考にしてみてください。
下塗りなし(シーラーレス)の外壁塗装をおすすめしない5つの理由
「下塗りなし(シーラーレス)の外壁塗装」をおすすめしない理由は以下の5つです。
- シーラーレスの外壁塗料は大手メーカーも量産していない!
- 外壁の劣化は均一ではない
- 仕上がりに期待は持てない?
- 施工実績が少なすぎる
- 色の”かぶり”の問題(職人泣かせ?)
それぞれ順番に解説します。
1-1.「シーラーレスの外壁塗料」は大手メーカーも量産していない!
耐久性などに何も問題がなければ、大手塗料メーカーも「シーラーレスの外壁塗料」を量産しているはずです。
しかし、実際に発売されている製品を見ても、ほとんどは下塗りが必要な外壁塗料です。(2021年5月時点)
(フッ素や無機などの)高耐久塗装となると、なおさら下塗りの重要性は大きいと言えます。
シーラーレスの外壁塗料は、大手塗料メーカーが量産しておらず(大丈夫とは言い切れないため)、おすすめすることはできません。
下塗りなしの外壁塗装でも問題ない”と言えるのではないでしょうか。 「シーラーレスの外壁塗料」が次々に発売されるようになれば、”
1-2.外壁の劣化は均一ではない
外壁の劣化は均一ではなく、東・西・南・北面にそれぞれ違った現象がでます。
そのため、塗装すると塗料を”吸い込む箇所”と”吸い込まない箇所”があります。
塗料の吸い込みがはげしい場合、通常の3回塗りのケースでも”仕上がりのムラ”ができることも珍しくないです。
下塗りの工程は”下地調整”とも言われますが、上塗りの塗料が吸い込まないようにするための役割もあります。
なし」の場合だと、上塗り塗料を余計に吸い込んでしまいます。
下塗り「上塗り塗料の吸い込みによるムラができてしまい、上塗りを3回塗るケースも少なくないことでしょう。
外壁の劣化現象が激しい場合は、”下塗りなしの外壁塗装”はおすすめできません。
(関連記事)
外壁の劣化現象は家によって違う!?劣化しやすい家の特徴や原因は?
1-3.仕上がりに期待は持てない?
塗料の吸い込みによる仕上がりのムラが出た場合、仕上がりに期待は持てないと言えます。
もう一度上塗り(3回塗り)をすることで、仕上がりのムラを修正することは可能ですが、(塗料の追加発注となると)塗装業者のほうは数万円の出費(利益からマイナス)が出てしまいます。
残った材料の範囲内で、(全体ではなく)目立つ箇所を中心に手直しするケースも少なくないはずです。
このようなリスクを考えると、やはり”下塗りなしの外壁塗装”をおすすめすることはできません。
1-4.施工実績が少なすぎる
もし、下塗りなしの外壁塗装の見積もり内容が気に入った場合
- どこか近くで工事した現場はありますか?
- 施工した現場を見てみたい!
- できれば「工事が良かったかどうか?」施主に聞いてみたい
というような気持ちになりませんか?
(質問された)塗装業者は、
- 〇〇市や○○町にはあります
- まだ近所で工事した現場はありません
- これから広めていきたい塗料です・・等々
上記のように、お客様の要望には応えることができない返答が少なくないことでしょう。
近くに現場があった場合でも、施工後間もないようであれば良いかどうかの判断はむずかしいと言えます。
全国的に考えてもまだまだ施工実績が少なすぎるため、下塗りなしの外壁塗装はおすすめできません。
1-5.色の”かぶり”の問題(職人泣かせ?)
上塗り塗料の良し悪しの基準に、”色のかぶり“の問題があります。
「色のかぶり」とは、下地の色を”隠ぺいする力”のことです。
たとえば、上塗りを塗った際、元々の外壁の色が”透けて見える”場合には、「色のかぶりが悪い塗料」と言います。
反対に、下地の色が透けて見えないようであれば、「かぶりが良い塗料」と呼びます。
とくに、もとの色が濃いめで明るい(薄い色)で塗装したいかたは注意が必要です。
このような場合、下塗り材は透明ではなく”白系”を使用します。
白系を使用すると、もとの外壁の色が透けて見えにくくなるため、上塗りをしたときに色のかぶりを良くすることができるからです。
下塗りなしの塗装となると、上塗りの色次第でかぶりが悪く、もとの外壁の色が”透けて見える”確率も高くなります。
結局職人泣かせになる?
下請け業者が施工する場合、色のかぶりの問題などで”追加で塗る作業の施工費”はもらえるのでしょうか。
この場合、元請けはお客様から追加料金を頂かない限り、下請け業者に”追加の施工費を支払うのは難しい”というケースが大半です。
結局のところ、職人泣かせ?になるケースが少なくないため、下塗りなしの外壁塗装はおすすめしません。
上記5つの理由からも分かるように、「下塗りなしの外壁塗装」はおすすめしません。
しかし、なかには予算の都合上「安いから検討してみようかな?」、というかたもいると思います。
そんなかたは、次に解説する見積もり依頼のときに注意が必要です。
下塗りなしだから安い!とは限らない
下塗りなし(シーラーレス)の外壁塗装だからと言って、金額が安いとは限りません。
そもそも外壁塗装の下塗り作業の”単価”(=1㎡あたりの施工価格)は、上塗り作業よりも安いからです。
そのため、以下の3つについては十分注意する必要があります。
- 3回塗りが2回塗りになっても金額が3分の2にはならない!
- 1社の見積もりだけでは安いかどうか判断できない!
- 保証書がないと5年以内に自腹で再塗装の可能性もある!?
上記は、「下塗りなしの外壁塗装」を検討するうえで、重要なポイントです!
それぞれ順番に解説しますので、注意しながら読み進めてみてください。
2-1.3回塗りが2回塗りなっても金額は3分の2にはならない!
下塗りなしの外壁塗装なら、(3回塗りが2回塗りになるから)「3分の2くらいの金額になるのでは・・」等と思っていませんか?
しかし、実際には2回塗りになっても、金額は3分の2にはなりません!
下塗り作業の”1㎡あたりの施工単価(円/㎡)”は、上塗り作業よりも安いからです。
「下塗り」と「上塗り」の1㎡あたりの施工単価(円/㎡)の相場は、以下のように大きく違います。
作業項目 | 施工単価(円/㎡)の相場 |
下塗り | 600~1,000円(1回塗り) |
上塗り | 1,300~2,500円(1回塗り) |
上記のように、下塗りの施工単価は(1回塗りで)1㎡あたり600~1,000円前後が相場です。
一方、上塗りは耐用年数(10年以上)の塗装で考えた場合、施工単価は(1回塗りあたり)1㎡あたり1,300~2,500円前後が相場になります。
そのため、下塗りなしの外壁塗装の金額は、実際には(3回塗りの外壁塗装の)3分の2以上になります。
3分の2くらいの金額になるのでは?」と思っているかたは注意してください。
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2-2.1社の見積書だけでは安いかどうか判断できない!
「下塗りなしの外壁塗装」を勧められた場合、1社の見積書だけで”安い”と判断してはいけません。
相場より高い見積もりをする悪徳業者が存在するからです。
(下塗りなしの)2回塗りの外壁塗装なのに”3回塗りより高い”、という可能性も否定できません!
最低でも2社以上、「下塗りなしの外壁塗装」の相見積もりをおすすめします。
(関連記事)
>>外壁塗装の見積もりは何社で決断するのが理想?【1社目が住宅会社の場合は要注意!】
2-3.5年以内に自腹で再塗装の可能性もある!?
下塗りなしの外壁塗装で、「もっとも不安な点は?」と質問された場合
という意見のかたが少なくないはずです。
通常の3回塗りの塗装の場合でも、工事完了後5年以内に自腹で再塗装を依頼されたお客様を、リフォーム営業マン時代にたくさん見てきました。
前回の塗装を「保証なし・格安すぎる業者」に依頼して”手抜き工事された”というのが主な原因ですが、下塗りなしの施工となると塗装が剥げてしまうリスクも高くなるはずです。
工事完了後、次の塗り替えまでの期間が短くなるというのは、「下塗りなしだから安い」とは言えないと思います。
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下塗りなしの外壁塗装を見積もりされた場合の対処法
こちらから依頼したのならともかく、下塗りなしの外壁塗装を見積もりされた場合は、どうしたら良いのでしょうか?
3-1.「保証書」の有・無と「保証内容」の確認
下塗りなしの外壁塗装の場合、保証書を発行してくれるのかどうか?は重要なポイントです。
施工後2~3年くらいで塗装が剥げてしまって、自腹で再塗装となってしまったら元も子もないからです。
施工後に塗装が剥げてしまう現象は、工事完了から1~3年以内に多く見られます。
そのため、塗装の剥離保証については”最低でも3年~5年以上の保証書を発行してくれる塗装業者”を選ぶほうが賢明です。
自社保証』のため、保証期間や内容には十分注意する必要があります。
しかし、外壁塗装の『保証』の大半は、リフォーム会社(塗装業者)が行う『以下の3つについては、無料で手直ししてくれるのかどうか?を事前に確認してみてください。
- 塗装の剥がれや膨れ(ふくれ)
- 外壁の色あせ(変色)
- 外壁・サイディング目地等のひび割れ
10年」だからといって、すべての不具合を10年間無料で手直ししてくれる訳ではありません。
外壁塗装の保証は「それぞれの項目ごとに、「無料で手直ししてくれる保証期間は何年なのか?」を契約前によく確認しましょう。
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3-2.下塗り「あり」の塗装見積もりも同時にしてもらう
下塗りなしの外壁塗装を勧められた場合、3回塗りの塗装より”いくら位安く工事ができるのか?”は、見積書がない限りわかりません。
最初の段階で、「3回塗りの塗装の見積もりも同時にしてもらえませんか?」と依頼してみてください。
無理な場合は、「比較したいのでもう1社見積もりしてから返事しますけど良いですか?」と伝えておけば問題ありません。
下塗り「なし」と「あり」、両方の見積もりがあれば、より冷静な判断ができるはずです。
3-3.どっちが長持ちするのか質問する!
「下塗りなし」と「下塗りあり」の外壁塗装は、どっちが長持ちするのか質問してみてください!
この質問がいちばん、安心できる塗装なのかどうか?を判断することができます。
その答えをキチンと聞いてから、見積もりしてもらうかどうか?を判断してみてはいかがでしょうか。
耐久性を求めていない場合でも、気軽に質問してみてみることをおすすめします。
3-4.施工後3年以上経過した現場を案内してもらう
施工後3年以上経過した現場を案内してもらうことができれば、施工面に関しては安心しても良いでしょう。
なぜ3年以上経過した現場なのか?というと、塗装が”剥離していないかどうか”を確認するためです。
3年以上経過している現場を案内してもらうことができれば、塗装の剥離の心配がいらない塗料と言えます。
1~2年未満の現場だと、完全に”剥離しない”塗装とは言い切れません。
完工後案内してもらえる現場の数が少ない(まったくない)可能性はありますが、”施工後3年以上”を意識しながら質問してみてください。
「下塗りなしの外壁塗装」を見積もりされた際には、上記4つの対処法を参考にしながら検討しましょう。
下塗りなし(シーラーレス)の施工でも問題ないケース
マサキ工房では、基本的には下塗りなし(シーラーレス)の外壁塗装はおすすめしていません。
しかし、以下のようなケースは、下塗りなしの外壁塗装でも問題ないのでは?と言えるでしょう。
参考までにご紹介します。
リフォームのメインが外壁塗装ではないケース(水回りや室内リフォームがメインで外壁塗装には予算をあまり使いたくない等)
母屋以外の外壁塗装(住んでいる家以外の建物、小屋や離れなど)
増改築工事などの外壁塗装(部分的に塗装するため色付けが主体の場合)
どうしても剥げてしまう箇所への塗装(サイディングの直貼りやふろ場などの外壁周り)
予算がどうしてもキビシイ(耐用年数は求めない場合)
上記で共通して言えるのは、お客様が”予算的にキビシイ”もしくは”予算をあまりかけたくない”=耐久性は求めない!というケースです。
このような場合は、下塗りなしの塗装を検討しても問題ないのでは?と言えるため参考にしてみてください。
(関連記事)
おわりに
下塗なし(シーラーレス)の外壁塗装について解説させて頂きました。
外壁塗装の見積もり依頼の際、この記事の内容を参考にして頂けると幸いです。
「下塗りなしの外壁塗装」は、環境問題を考えると油性の下塗り塗料を使用する場合と比べ、とても良い工法だと思います。
塗料やシンナーに含まれるトルエン、キシレンなどのVOC(揮発性有機化合物)の削減にもなるからです。
この記事の内容にある通り、剥離しないのかどうか?などの不安は残りますが、お客様(消費者)にとっては工期短縮や低価格などのメリットもあります。
予算的にキビシイ・耐久性は求めない!というかたは、記事の内容を参考にしながら検討してみてください。
最後まで記事を読んでいただき、ありがとうございました。