こんにちは、マサキ工房です。
21年間のリフォーム営業と工務5年の経験をもとに、「住まいのリフォームに関する悩みや疑問を解決する記事(情報)」をお届けしているブログです。【2016年11月~小さな工務店を経営】
外壁塗装の付帯部でもある「破風板(はふいた)」は、幕板(まくいた)や鼻隠し(はなかくし)と呼ぶケースも少なくないです。
僕はこれまで、外壁塗装の見積書の作成・商談2,000件以上(そのうち1,200軒以上の契約・完工)を経験してきました。
「破風板」は同じ意味で使用したり、全く違う部位を指したりするケースもあります。
見積書の確認や色の打ち合わせの際、勘違いが起こりやすい部位でもあるため注意が必要です。
この記事では、外壁塗装工事の際にいっしょに行う「破風板(はふいた)塗装」について解説しています。
記事を読むことで以下のことが分かります。
- 幕板・鼻隠しとの違い
- 破風板の素材【塗装する際の注意点】
- 破風板塗装の単価・費用相場
外壁塗装を検討する際、ぜひ記事の内容を参考にしてみてください。
「破風板」と「鼻隠し」は同じ?
じつは、「破風板(はふいた)」と「鼻隠し(はなかくし)」は、同じ部位ではありません。
しかし、外壁塗装工事では鼻隠しも「破風板塗装」で見積もりされるケースも多いため注意が必要です。
破風板
「破風(はふ)」とは、切妻や入母屋造の屋根の妻側(△になる部分)の造形のことです。
「破風」に取付けしてある(斜めの)板のことを”破風板”と呼びます。
”片流れ屋根”や屋根の端部分の板(下記画像)も「破風板」です。
ケラバとは?
「ケラバ」とは屋根の場所(位置)を指す用語で、破風板を取付ける屋根の端周辺部分のことです。
*「ケラバ」という用語は、(屋根の補修・板金・葺き替え工事など)屋根工事の際によく使用さます。
鼻隠し
「鼻隠し(はなかくし)」とは、軒樋(のきどい)が取付けられた横板(下記画像の点線部分)のことです。
*鼻隠しは「幕板(まくいた)」とも呼びます。
しかし、下記(画像)のような住宅の場合、外壁と外壁の境界に取付ける板(点線部分)も「幕板」と呼ぶため注意が必要です。
*ほかにも「帯板(おびいた)」や「胴差(どうさし)」と呼ぶケースもあります。
色決めのやり取りの際には、(勘違いが起こりやすいため)特に注意してください。
塗装業者との破風板と鼻隠しの役割
「破風板」と「鼻隠し」の役割はおもに以下の3つです。
雨風の侵入を防ぐ
「破風板」と「鼻隠し」には、建物の屋根裏や屋根の下地(垂木・野地板など)への雨風の侵入を防ぐ役割があります。
破風板(鼻隠し)がないと強風等で横殴りの雨が入りこんでしまい、屋根の下地が傷んで腐食しやすくなります。
軒樋の金具の下地
軒先に取付ける「鼻隠し」は、軒樋(のきどい)金具の下地(下記画像)の役割もあります。
「鼻隠し」のない家は、垂木(たるき)に軒樋の受け金具を取付けします。(下記画像)
防火(延焼防止)
「破風板」と「鼻隠し」は、いっしょに軒天を張ることで(密閉状態になるため)、屋根裏の防火(延焼防止)の役割にもなります。
*(近年では)破風板・鼻隠し・軒天の材料に、(燃えにくい)不燃材を使用するのが主流です。
ないと(垂木等に)軒天を張っても密閉状態にはなりません。
「破風板」や「鼻隠し」が(関連記事)
破風板(鼻隠し)の素材【塗装する際の注意点】
破風板(鼻隠し)の素材は、大きく分けると以下の4種類です。
- 木製
- 窯業系(樹脂系)
- 金属系
- モルタル
それぞれの素材と塗装する際の注意点について解説します!
木製
「木製の破風板(鼻隠し)」は、塗装が劣化すると雨(湿気)を吸い込んでしまうため徐々に腐食してしまいます。
そのため、(8~10年ごとを目安に)定期的な塗装のメンテナンスが必要です。
塗装する際の注意点
木製の破風板(鼻隠し)の塗装は、「造膜型」と「浸透型」の2種類の塗料を使用する方法があります。
造膜型の塗料
「造膜型」の塗料は、木の表面に塗膜をつくって色付けする塗料になります。
高圧洗浄 → ケレン(下地調整)の後、【下塗り→上塗り(1回目)→上塗り(2回目)】の計3回塗りがベストな施工方法です。
造膜型の塗料は、「色の選択肢が多い・高耐久の塗装も可能」というのがメリットと言えます。
デメリットは「木目がなくなる」という点と、(木は呼吸するため)どうしても「塗装が剥げやすい」ことです。
南面の破風板を塗装する場合には、雨と紫外線の影響を受けやすいため注意しましょう。
とくに、陽あたりのよい浸透型の塗料
「浸透型」の塗料は、木自体に染み込ませて(浸透させて)色付けする塗料になります。
高圧洗浄 → ケレン(下地調整)の後、【上塗り(1回目)→上塗り(2回目)】の計2回塗りの施工が一般的です。
メリットは「木目を残すことが可能」という点と、木材を保護するのに優れた塗料のため防虫・防腐・防カビの性能が高いことです。
しかし、「色の選択肢が少ない」という点と、旧塗膜を(極力)除去しないと塗料が染み込まないため、「ケレン作業に手間(時間)がかかる」というデメリットがあります。
造膜型と浸透型のどちらを使用するのか?は事前に確認しましょう!
窯業系(ようぎょうけい)
「窯業系の破風板(鼻隠し)」は、サイディング外壁と同様にセメントを主成分とする素材です。
耐火・防火に優れた不燃材で美粧性も高いため、近年では新築住宅の多くに使用されています。
サイディング外壁と同様に、塗装が劣化するとヒビ割れしやすいため、(8~12年ごとを目安に)定期的な塗装のメンテナンスが必要です。
塗装する際の注意点
窯業系の破風板(鼻隠し)の塗装は、高圧洗浄 → ケレン・コーキング(下地処理)の後、【下塗り→上塗り(1回目)→上塗り(2回目)】の計3回塗りがベストな施工方法です。
しかし、塗膜の劣化が少ない場合には、下塗りなしの2回塗りの見積もりをする塗装業者も少なくないと思います。
格安業者は(劣化具合に関係なく)2回塗りの見積もりが多いです。
見積書を確認する際には、金額だけでなく塗り回数に注意してください。
特に陽あたりのよい面に破風板がある場合は、(塗装が剥げやすいため)3回塗りをしてくれる業者をおすすめします。
金属系
「金属系の破風板(鼻隠し)」には、カラートタンやガルバリウム鋼板製があります。
被せる施工方法になります。
破風板(鼻隠し)の厚み分がすべて金属という訳ではなく、木製の破風板(鼻隠し)の上から金属板を(製品にもよりますが)カラートタンは新築から5~10年、ガルバリウム鋼板は15~20年くらいすると「色あせ・チョーキング等」が発生するため、定期的な塗装のメンテナンスが必要です。
塗装する際の注意点
金属系の破風板(鼻隠し)の塗装は、高圧洗浄 → ケレン・コーキング(下地処理)の後、【下塗り(サビ止め)→上塗り(1回目)→上塗り(2回目)】の計3回塗りがベストな施工方法です。
(窯業系と同様に)サビが発生していない場合は、下塗りなしの2回塗りの見積もりをする塗装業者も多いことでしょう。
金属系の破風板の場合も、金額だけでなく塗り回数に注意しましょう。
ガルバリウム鋼板は塗装が不要?
「ガルバリウム鋼板」はサビにくいとはいえ、(半永久的に)「サビない・色あせしない」ことはないため、塗装が不要という訳ではありません。
しかし、はじめての外壁塗装のタイミングが築15年未満の場合は、「塗装しなくても大丈夫ですよ!」という塗装業者が多いと思います。
”色あせ”が気になるかたは、塗装業者(複数社)の意見をよく聞いてから「塗装するかどうか?」を判断してみてください。
モルタル
破風板(鼻隠し)がモルタルの住宅は、外壁・軒天も同じようにモルタル仕上げのケースが多いです。
モルタルは塗装が劣化するとヒビ割れが発生するため、(8~12年ごとを目安に)定期的な塗装のメンテナンスが必要です。
塗装する際の注意点
モルタルの破風板(鼻隠し)は、高圧洗浄 → ヒビ割れ補修(コーキング)の後、【下塗り→上塗り(1回目)→上塗り(2回目)】の計3回塗りがベストな施工方法です。
打ち込みタイプ(下記画像)を取付けしてあります。
モルタルの鼻隠しには、軒樋の受け金具がヒビ割れしやすいため”下塗り”に注意が必要です。
金具の根本が*(ヒビ割れに強い)フィラーもしくはサーフ系の材料で下塗りしてくれる業者をおすすめします。
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このように、破風板(鼻隠し)は材質によって塗装する際の注意点が違います。
上記を参考にしながら、破風板(鼻隠し)の材質にあったベストな施工をしてくれる塗装業者をおすすめします。
もし、(将来的に)傷んで交換となった場合、(必然的に雨樋も外さないといけないため)「雨樋まで交換しないといけない!」ということにもなるからです。
(長い目でみると)外装メンテナンスの費用は最小限の出費で済むはずです。
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破風板塗装の単価・費用相場
破風板塗装の単価相場(1mあたりの施工価格)は以下の通りです。
塗り回数 | 単価相場(円/m) |
2回 | 700~1,200 |
3回 | 1,000~1,500 |
単価相場にはケレン・コーキング(下地処理)の料金を含みます。
上記のように、破風板塗装の単価相場は2回塗りで700~1,200(円/m)、3回塗りする場合は1,000~1,500(円/m)です。
(例えば)総二階建て30坪の住宅の場合、破風板(鼻隠し)の長さは30~40mくらいあります。
仮に、破風板(鼻かくし)40mのケースで費用相場を計算すると以下の通りです。
塗り回数 | 費用相場(円)<40m> |
2回 | 28,000~48,000 |
3回 | 40,000~60,000 |
上記のように、破風板(鼻隠し)40mを塗装する場合の費用相場は、2回塗りで28,000~48,000(円)、3回塗りする場合は40,000~60,000(円)になります。
全体の単価・費用相場については以下の記事でくわしく解説しています。
破風板以外の”付帯塗装”・外壁塗装工事破風板(鼻隠し)塗装でよくある質問【Q&A】
ここでは、破風板(鼻隠し)塗装でよくある質問【Q&A】を3つご紹介します。
破風板(鼻隠し)の部分的な交換はできますか?
破風板(鼻隠し)は、(腐食した箇所だけなど)部分的に交換することができます。
ただし、窯業系の破風板を交換する場合は、部材自体が2~4mのものを使用する(仕入れる)ため、長さに応じた範囲での交換となります。
また、下記(画像)のように平板(フラット)ではなく、ライン(段差)等のデザインを施した化粧板は注意する必要があります。
中止になっている可能性もあるからです。
デザインの変更や生産とはいえ、(軒樋の取付けも関係しますが)化粧板の場合は、東・西面など一面ごとに交換すれば美観的には問題ないと思います。
破風板の塗装は(数年で)剥げますか?
破風板は、鼻隠しよりも紫外線・雨風の影響を受けやすく傷みやすい部位ではありますが、必ず数年で塗装が剥げるという訳ではありません。
数年で塗装が剥げてしまうのは、「高圧洗浄・ケレン・下塗り不足(手抜き)」が大半の原因です。
特にケレンを手抜きする業者は珍しくないため注意が必要です。
どうしても心配なかたは、(上から被せる)ガルバリウム鋼板の施工を検討してみてください。
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破風板を鼻隠しと違う色にすると似合わないですか?
破風板を鼻隠しと違う色(アクセントカラー)にした場合でも、似合わないということはありません。
実際、アクセントカラーを希望するかたは少なくないです。
ただし、カラーシミュレーションの作成をしてくれる塗装業者をおすすめします。
*破風板は高所にあるため、色見本帳や色板見本を実際にあてて確認することができないからです。
(関連記事)
まとめ
外塀塗装工事でいっしょに行う「破風板塗装」について解説させて頂きました。
見積書の確認や色の打ち合わせの際、この記事の内容を参考にして頂けると幸いです。
(意外に思われるかも知れませんが)「破風板塗装の剥げている部分が気になって外壁塗装を決断した!」というかたは珍しくありません。
僕の過去の経験(1,200軒以上の完工)の中で、少なくとも50名以上のかたが口にされたと思います。
この記事でもお伝えしましたが、破風板塗装が剥げる原因は高圧洗浄・ケレン・(下塗り不足)です。
塗装業者を選ぶ際には、特にケレンの有・無(入念に行ってくれるのか?)を確認しましょう。
そうすればきっと、手間のかかるケレン作業も入念に行われるはずです。
最後まで記事を読んでいただき、ありがとうございました。