こんにちは、マサキ工房です。
21年間のリフォーム営業と工務5年の経験をもとに、「住まいのリフォームに関する悩みや疑問を解決する記事(情報)」をお届けしているブログです。【2016年11月~小さな工務店を経営】
塗装工事は、ケレン作業を丁寧におこなうほど、塗装が長持ちするだけでなく仕上がりも”きれい”です。
僕はこれまで、外壁塗装の見積り(商談)を2,000件以上、そのうち1,200軒以上の契約・完工を経験してきました。
ケレン作業は、(手間がかかるため)手抜きする塗装業者(職人)も珍しくありません。
「見積書に”ケレン”の文字が書かれていない」ケースもあるため注意が必要です。
この記事では、塗装工事のケレン作業について、”手抜きされる原因”とその対処法などを解説しています。
記事を読むことで、手抜きされないための”対策”がわかります。
塗装工事の見積書を確認するときに、ぜひ記事の内容を参考にしてみてください。
塗装工事の見積書に『ケレン』の文字はありますか?
塗装工事の見積書に『ケレン』の文字はありますか?
*ケレン作業には、研磨紙や皮スキ、サンダーなどの電動工具を使用します。
じつは、塗装工事でおこなうケレン作業は、「下地処理」や「下地調整」などの項目で見積されるケースが大半です。
なぜかというと、(とくに木・鉄微などは)高圧洗浄してみないと、「サビや汚れがどこまで落ちるか?」やサビなどによる腐食の度合いがわからないからです。
そのため、塗装する箇所全体の「下地処理費」や「下地調整費」などの項目で見積りされます。
*塗装業者次第では、施工単価にケレン作業が含まれるケースもあります。
また、ケレン作業は「サビなどがある場合のみおこなえばよい」というわけではないため注意が必要です。
サビなどに関係なく、(とくに付帯部の)ケレン作業は必須です。
なぜケレン作業が必要?
なぜ、サビなどがない場合でも(素材によって)ケレン作業が必要なのでしょうか?
塗装工事でおこなうケレン作業には、以下3つの目的があります。
- 素材の腐食を防ぐため
- 塗料の密着性を高めるため
- 塗装の仕上がりをキレイにするため
「ケレンなしの場合にはどうなるのか?」も含め、それぞれ順番に解説します。
1. 素材の腐食を防ぐため
「ケレン作業」は、(木・鉄部など)素材の腐食を防ぐためにおこないます。
*とくに鉄部のサビは、見た目にひどくない場合でも注意が必要です。
「ケレンなし」で塗装した場合、経年によって(サビがなかのほうで)少しずつ進行していくからです。
そのため、サビ止めの下塗りをする場合でも、ケレン作業後に塗装してくれる業者をおすすめします。
(見積りの段階で)ケレンの有・無を業者に確認してみてください。
また、サビ止めの下塗りは、塗料(製品)によって”サビ止め効果”がそれぞれ違います。
サビがひどい場合には、「水性・油性タイプ」やサビ止め効果のグレード(高い・低い)も確認しましょう。
(関連記事)
>>外壁塗装に使用する『水性と油性』塗料はどっちのほうが長持ちする?
2. 塗料の密着性を高めるため
「ケレン作業」は、”塗料の密着性を高める”ためにおこないます。
*塗装工事では基本中の基本です。
近年の塗料は、(密着性に優れているため)「ケレンなしで塗装しても問題ない!」という塗料もあります。
しかし、ケレン後に塗装したほうが確実に密着性は高いです。
とくに、外壁塗装の付帯部(破風板・雨樋・雨戸)と、スレート屋根(コロニアルなど)の板金部分は注意する必要があります。
ケレンなしで塗装すると、(数年後に)剥げやすくなるからです。
3. 塗装の仕上がりをキレイにするため
塗装工事は、ケレン作業を丁寧におこなうほど塗装の仕上がりはキレイになります。
建物の外部はつねに雨風にさらされているため、素材の表面には小さな傷がたくさんあります。
つまり、素材の表面があちこち凸凹(でこぼこ)している状態です。
*高圧洗浄後に手でさわるとザラザラする箇所もあります。
表面が凸凹より”なめらか”にしてから塗装したほうが、「仕上がりはキレイになる!」というのはイメージして頂けるのではないでしょうか。
このように、塗装工事の「ケレン作業」には上記3つの目的があります。
サビなどがない場合でも、素材次第では必須の作業です。
無をかならず確認しましょう。
見積書を確認するときには、ケレンの有・ケレンを手抜きされる原因【対処法はあるのか?】
塗装工事の基本なのに、なぜ”ケレン”を手抜きされるのでしょうか?
ここでは、ケレンを手抜きされる原因とその対処法について解説します。
4つの原因と対処法
塗装工事のケレンを手抜きされる原因は、以下の4つが考えられます。
- 工事契約の金額が安すぎる
- 下請け業者に十分な施工費が支払われない
- 下請けと元請け業者(担当者)の関係性が良くない
- 塗料メーカーの技術の進歩?
1. 工事契約の金額が安すぎる
あまりにも工事契約の金額が安すぎると、ケレン作業を丁寧におこなうのは難しくなります。
*ケレン作業を丁寧におこない人件費をかけすぎると、赤字になるケースもあるからです。
とくに、(雨戸・雨樋など)付帯塗装の面積(数量)が広いケースは、ケレン作業を手抜きされやすいため注意してください。
格安すぎる業者に工事を依頼した場合、(良い工事をするための)職人のパフォーマンスはどうしても難しくなります。
対処法は?
1社だけの見積りでは、”金額が高い・安い”を判断するのは困難です。
できるだけ2~3社の相見積もり(あいみつもり)をして、費用相場を把握することをおすすめします。
あまりにも格安すぎる業者は、ケレン作業を手抜きされる可能性もあるため注意しましょう。
(関連記事)
>>外壁塗装の見積もりは何社で決断するのが理想?【1社目が住宅会社の場合は要注意!】
>>塗装工事の見積もり依頼のときに『相見積もり』の意思は伝えるべき?
2. 下請け業者に十分な施工費が支払われない
依頼する会社の規模に関係なく、(元請けから)「下請け業者に十分な施工費が支払われない」というケースは昔から無くなりません。
下請け業者に十分な施工費が支払われない場合、ケレンを手抜きされる可能性は高いです。
対処法は?
「ウチの家は”何年くらい”下請けしている業者が塗装するんですか?」と質問してみてください。
長いあいだ下請けをしている業者であれば、”十分な施工費が支払われている可能性は高い”と判断することができます。
十分な施工費が支払われない会社の仕事は、(おそらく)下請け業者も長くは続かないはずだからです。
3. 下請けと元請け業者(担当者)の関係性が良くない
下請けと元請け業者(担当者)の関係性が良くない場合も、ケレンは手抜きされやすいです。
と、疑問に思われるかたもいるかも知れません。
たとえば、工事を依頼した会社(担当者)が、下請け業者に”すべて任せっきり”にするケースがよい例です。
もし、(工事期間中に)「担当者から一度も連絡なし」とか「依頼した会社の人はだれも顔を出さなかった」としたら、どのように感じますか?
お客様はもちろんのこと、下請け業者もあまり良い気分で作業はできないはずです。
手間のかかるケレン作業が、”手抜きされない”とは言い切れません。
対処法は?
業者選びの段階で、「現場管理者の有・無」を確認してみてください。
そうすれば、「下請け業者に任せっきりの会社かどうか?」を判断することができます。
不在にするかたは注意してください。
とくに、(共働きなどで)工事期間中に家を(関連記事)
>>外壁塗装の足場にかかる時間は?組み立てと解体時に不在の場合は要注意!?
4.塗料メーカーの技術の進歩が原因?
(近年)塗料メーカーの技術の進歩によって、「ケレンしなくても大丈夫なのでは?」というような”密着性の高い”下塗りの種類が豊富です。
たとえば、(サビの度合いに応じて)使い分けができるほど、サビ止めの種類もあります。
そのため、「ケレンしたほうが良い!」とわかってはいるものの、手抜きをする業者(職人)が少なくないです。
対処法は?
「ケレンなし」で塗装した場合に起こる不具合は、施工後1~3年以内に塗膜が剥げてしまう現象です。
そのため、(最低)「3年以上の塗膜の剥離(はくり)補償」をしてくれる塗装業者をおすすめします。
「保証期間」は、すべての不具合が(=無料手直しの期間)というわけではないです。
補償(=無料手直し)の期間が違うため注意しましょう。
不具合の劣化症状に応じて、(関連記事)
>>外壁・屋根塗装の保証は『リフォーム瑕疵(かし)保険』加入業者のほうが安心?
外壁・屋根塗装でケレン作業が必要な箇所
戸建住宅の塗装工事で”ケレン作業が必要となる箇所”は、どの部分なのでしょうか?
ここでは、(外壁・屋根塗装ごとに)ケレン作業が必要となる箇所を説明します。
外壁塗装でケレン作業が必要な箇所
外壁塗装の見積書の項目で”ケレン作業が必要”となるのは、おもに以下の6箇所です。
- 金属系のサイディング(とくにアルミ素材)
- 破風板(鼻隠し)
- 雨樋・配管とその金具
- 雨戸・戸袋<*サッシ枠はアルミ素材のため不要>
- ベランダの手すり(アルミ以外)
- 土台水切り(銅製以外)
水切り」とは、基礎と外壁のあいだにある下記(画像)の赤枠部分のことです。
「6. 土台*土台水切りは銅製の場合、ケレン・塗装ともに不要です。
外壁塗装のケレンは「目荒らし作業」が大半
外壁塗装のケレンは、サンドペーパー(研磨紙)などによる”目荒らし”の作業が大半です。
また、よほど塗装の劣化がひどくないかぎり、(通常)外壁のケレンはおこないません。
そのため、ケレンは(雨樋・雨戸・破風板など)付帯部がメインです。
(関連記事)
>>塗装工事のケレン作業は『単価と費用相場』に注意!?契約時に確認するポイント!
ケレンは業者によって意見が分かれる?
木・鉄部のサビや腐食がひどい場合、「ケレン後に塗装しても大丈夫なのか?」もしくは「取替え(新設)したほうが良いのか?」を業者に確認しましょう。
劣化状況や業者の得意分野によって、「塗装OR取替え(新設)」の意見が分かれるケースもあるからです。
大丈夫」・「取替えないとダメ」という意見にわかれるため注意してください。
とくに”雨樋塗装”は、(業者によって)「塗装で(関連記事)
アルミサイディングの外壁は高圧洗浄にも注意!
「1. 金属系サイディング」のなかでも、とくにアルミサイディング(主にリフォーム材)の外壁は、高圧洗浄にも注意する必要があります。
アルミサイディングは、チョーキング(白亜化現象)が著しくひどいケースが大半のため、通常の高圧洗浄では旧塗膜が落ちにくいからです。
通常の高圧洗浄をしても、手でさわると白い粉がつきます。
この場合の高圧洗浄は、通常よりも圧力の高い”トルネード洗浄”が適切な作業です。
*アルミサイディングの外壁にお住まいのかたは注意してください。
(関連記事)
>>塗装工事の高圧洗浄に必要な作業時間・乾燥の目安は?【3種類の洗浄方法の単価も解説!】
屋根塗装でケレン作業が必要な箇所
屋根塗装の見積書の項目で”ケレン作業が必要”となるのは、おもに以下の3箇所です。
金属系の屋根材
スレート系屋根材の板金部分
セメント・モニエル瓦の小口部分
上記の3箇所は、外壁のケレン箇所よりもサビ(コケ)がひどいケースが大半です。
そのため、サンドペーパー(研磨紙)だけでなく、ワイヤーブラシやサンダーを使ったケレン作業も多くなります。
屋根の「コケ」を完全に除去することはできない!
上記3箇所に共通していえるのは、(高圧洗浄しても)屋根の「コケ」を完全に除去することはできない!ということです。
*高圧洗浄時には、屋根材が濡れているためコケが見えにくいからです。
乾燥すると屋根材のすき間などに、かならず(ところどころ)コケがあります。
そのため、かならずワイヤーブラシによるケレン作業(コケ落とし)が必要です。
「細かい粒子のコケ」は、下塗り材が密着してコケごと固めてくれるため問題ありません。
しかし、「3. セメント・モニエル瓦の小口部分」に関しては要注意です。
セメント・モニエル瓦の小口部分とは?
「3. セメント・モニエル瓦の小口部分」とは、瓦と瓦が重なる部分のことで下記(画像)の赤枠のことです。
セメント・モニセル瓦を塗装した場合、小口部分はもっとも塗装が剥げやすいといえます。
なぜなら、小口のケレン作業を手抜きする塗装業者は少なくないからです。
小口のケレン作業を手抜きすると塗装が剥げやすい
セメント・モニエル瓦の小口は、(圧力の高い)”トルネード洗浄”をおこなった場合でも、コケや汚れは完全には落ちません。
強引に洗浄しようとすると、瓦と瓦のあいだに水が大量に入ってしまって、洗浄中に雨漏りする恐れがあるからです。
そのため、高圧洗浄後に瓦が乾燥してから”洗い残しの点検”をおこない、「塗膜の剥がれ・コケなど」をワイヤーブラシによるケレン作業(コケ落とし)をする必要があります。
この作業をしないと、下記(画像)のように1~3年以内に小口部分の塗装が剥げてしまいます。
僕自身の”過去の失敗”も含め、屋根塗装でいちばん多い失敗事例です。
とくに、屋根塗装の”保証がない”業者に依頼する際には、ケレン作業の手抜きに十分注意しましょう。
上記の「外壁・屋根塗装でケレン作業が必要な箇所」は、トラブルを回避するためにも契約時に確認することをおすすめします。
ない場合は、とくに注意してください。
見積書に「ケレン」の文字が(関連記事)
まとめ
塗装工事のケレン作業について、”手抜きされる原因”とその対処法などを解説させて頂きました。
塗装工事の見積書を確認するときに、この記事の内容を参考にして頂けると幸いです。
対処法を意識しながら契約時に確認しておけば、ケレン作業を手抜きされるケースはかなり少なくなると思います。
「優良業者かどうか?」の判断もしやすくなることでしょう。
最後まで記事を読んでいただき、ありがとうございました。
関係性が良くないってどういうこと?