こんにちは、マサキ工房です。
21年間のリフォーム営業と工務5年の経験をもとに、「住まいのリフォームに関する悩みや疑問を解決する記事(情報)」をお届けしているブログです。【2016年11月~小さな工務店を経営】
外壁塗装の付帯部でもある”軒天”は2回塗りの施工をするのが一般的です。
僕はこれまで外壁塗装の見積書の作成と商談を2,000件以上経験してきましたが、(大半のケースで)軒天は2回塗りの見積もり(提案)をしています。
しかし、材質や劣化症状によっては3回塗りが適切なケースもあるため注意が必要です。
この記事では、外壁塗装の付帯部でもある「軒天塗装」について解説してます。
記事を読むことで、軒天塗装の単価相場や2回塗りの業者が多い理由が分かります。
外壁塗装の見積書を確認する際、ぜひ記事の内容を参考にしてみてください。
軒天とはどの部分?
軒天(のきてん)とは、上記(画像)の外壁からはみ出した屋根の裏(赤点線部分)のことです。
*軒天井(のきてんじょう)や軒裏(のきうら)、上げ裏(あげうら)とも呼ばれます。
屋根下地の「垂木(たるき)や野地板(のじいた)」等を隠すことで美観性が良くなるため、軒天に建材を張っている住宅は多いです。
火災が発生した際、屋根裏の延焼防止等の役割もあります。
純和風住宅の場合は、あえて軒天に何も張らないケースのほうが多いです。
軒天の塗装時期は?
軒天は(外壁と同様に)10~15年ごとの塗装が必要になります。
紫外線のあたらない部分ですが内部に湿気がたまりやすく、経年によって「ヒビ割れ・黒ずみ」等の劣化症状が出るからです。
そのため、外壁塗装で足場を設置した際、外壁といっしょに軒天塗装も行うのが一般的です。
塗装せずに放っておくと(腐食するなどして)張り替えとなってしまう可能性もあるため注意しましょう。
軒天の材質(種類)
軒天の材質には以下の5種類があります。
- ベニヤ板・合板
- ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)
- スラグ石膏板(エクセルボード)
- フレキシブルボード
- 金属板
1. ベニヤ板・合板
「ベニヤ板」は、木材を厚さ3mm(ミリ)程度に加工した単層(1枚)の板のことです。
「合板」は、木材の繊維が互い違いになるように何枚か重ねて複層にした板になります。
- ベニヤ板(べニア板)→ 単層(1枚)の板で厚みは2.5~4mm
- 合板(ごうはん)→ 複層の板で厚みは9・12mmが主流
化粧ベニヤ板」や「化粧合板」を張るのが一般的です。
軒天には、表面に(木目調などの)プリント加工や塗装が施された「2.ケイカル板(ケイ酸カルシウム板)
「ケイカル板」とは、ケイ酸カルシウムを主原料とするボードのことで、もっとも燃えにくいとされる不燃材のひとつです。
耐火・防火性は、(不燃材>準不燃材>難燃材)の順になります。
材料が安価で施工しやすく木材よりも断熱性があるため、戸建て住宅の軒天に使用するケースは多いです。
ケイカル板は厚みが12mm位のものまでありますが、新築時の軒天には5mm(ミリ)前後を使用するケースが大半です。
薄い)ケイカル板ほど、釘まわり等からヒビ割れしやすいため注意しましょう。
厚みのない(有孔ボードとは
軒天をよく見ると、下記(画像)のように穴のあいた箇所がありませんか?
上記(画像)のように等間隔に穴があけられた軒天板は、「有孔(ゆうこう)ボード」(有孔板)と言います。
軒天を高圧洗浄するときの注意点
有孔ボード以外の軒天は、(至近距離で洗うとボードが割れてしまうため)洗浄ガンの先端ノズルからの距離を調整しながらの作業が必要です。
有孔ボード周辺は、(斜めから高圧洗浄するなど)中に水が入らないように作業をします。
しかし、ケレン作業は手間がかかるため、有孔ボード部分も強引に高圧洗浄しようとする業者も少なくありません。
(念のため)見積もりの段階で、有孔ボード周辺の「高圧洗浄の方法」や「ケレン作業の有・無」を業者に確認しておきましょう。
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3.スラグ石膏板(エクセルボード)
「スラグ石膏(せっこう)板」とは、製鉄所から産出する鉱物(スラグ)と石膏を主原料とする不燃材のひとつです。
*エクセルボードとも呼ばれます。
加工しやすく「耐火・防火・断熱性」に優れた建材のため、戸建て住宅の軒天以外の箇所にも幅広く使用される建材です。
しかし、ケイカル板よりも材料費が1.5~2倍前後かかるため、一般の戸建て住宅の軒天には使用頻度が低いと言えます。
4.フレキシブルボード
「フレキシブルボード」とは、セメントと補強繊維を主原料とする不燃材のひとつです。
セメントを原料として高圧プレスで成形する建材のため、不燃性だけでなく衝撃や湿気にも強い(高耐久)という特長があります。
*スレートや繊維強化セメント板とも呼ばれます。
高耐久ですがスラグ石膏板よりも材料費が高く重量もあるため、一般の戸建て住宅の軒天に使用されるケースは少ないです。
5.金属板
軒天には、ガルバリウム鋼板やアルミスパンドレルと呼ばれる金属板を張るケースもあります。
金属板は、高耐久で耐火・防火・耐水性にとくに優れた建材ですが、施工費用も高くなるため一般の戸建て住宅の軒天に使用されるケースは少ないです。
不要という訳ではありません。
「ガルバリウム鋼板」や「アルミスパンドレル」の金属板は、高耐久ですがメンテナンスサビなどの腐食防止のため、(10~15年ごとに)定期的な塗装のメンテナンスが必要です。
軒天塗装に使用する塗料の種類と単価相場【2回塗りの業者が多い理由】
外壁塗装の見積もりをすると、付帯部の軒天塗装は”2回塗り”と”3回塗り”の業者に分かれます。
どちらかと言えば、「2回塗り」の業者のほうが多いと思います。
2回塗りの業者が多い理由
建物の軒天部分は、塗装の劣化原因でもある紫外線・酸性雨の影響をほとんど受けません。
そのため、「やに・しみ止め効果」のある専用塗料で2回塗りをするケースが大半です。
2回塗りの場合でも、下地処理(ケレン・ヒビ割れ補修など)は必須の作業になります。
しかし、以下3つのケースは(下塗りをする)3回塗りの塗装をおすすめします。
- 軒天にリシン塗装をしてある
- 新築から2回目以降の塗装(築20年以上)
- 軒天のヒビ割れ・パテ補修箇所(穴埋め)が多い
上記のケースは下塗りなしの2回塗りをすると、旧塗膜(下地)との密着性があまり良くないため塗装が剥げやすいからです。
また、表面の凹凸がでやすいため塗装の仕上がり(美観性)が悪いケースもあります。
ベニヤ板・合板の場合は、木部専用塗料の(吸い込み具合を確認しながら)2~3回の塗装が必要です。
軒天が該当するかたは、見積書を確認するときに参考にしてみてください!
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軒天塗装に使用する塗料の種類と単価相場
軒天塗装に使用する専用塗料には、以下の2種類があります。
- EP(合成樹脂エマルションペイント)
- NAD(非水分散形塗料)
それぞれの特徴と単価相場を解説します。
EP(合成樹脂エマルションペイント)
EP(合成樹脂エマルションペイント)は、水で希釈して使用する水性系塗料です。
材料は安価ですが耐候性は低いため、内装に使用するケースが多いと言えます。
EPで施工する場合の単価相場は、2回塗りで1㎡あたり600~800円です。
NAD(非水分散形塗料)
NADとは、Non Aqueous Dispersion(ノン・アクア・ディスパージョン)の略で、和名では「非水分散形塗料」と呼ばれます。
微粒子化した樹脂が溶剤(シンナー)に分散している状態の油性系塗料です。
軒天専用のNAD(アクリル樹脂系非水分散形塗料)では、ニッペ・ケンエースG-Ⅱを使用している塗装業者が多いと思います。
NAD型塗料で施工する場合の単価相場は、2回塗りで1㎡あたり800~1,500円です。
以外の”付帯塗装”・外壁塗装工事全体の単価・費用相場については以下の記事でくわしく解説しています。
軒天軒天塗装でよくある質問【Q&A】
ここでは、軒天塗装でよくある質問【Q&A】を3つご紹介します。
1. 軒天はホワイト系の色で塗装しないとダメですか?
軒天はホワイト系以外の色で塗装することもできます。
外壁と同色(同じ塗料)で塗装したり、別の塗料を使用して外壁と同系色を選ぶかたも少なくないです。
天井が広い場合は、濃い目の色で塗装すると暗すぎてストレスを感じるケースもあるため注意が必要です。
下記(画像)のように、出入りする玄関・バルコニー(ベランダ)の軒天を(黒系など)濃い目の色で塗装したい場合、日中だけではなく夜の照明の反射なども考慮しながら、ライフスタイルに合わせて検討することをおすすめします。
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2. 軒天が黒くなっている(黒ずみ)箇所は雨漏りしているの?
軒天が黒くなっている(黒ずみ)箇所は、必ずしも雨漏りしているという訳ではありません。
黒くなっている(黒ずみ)箇所は、大半のケースで外部からの湿気が原因で発生している黒カビだからです。
ただし、あまりにも軒天が黒くなっている(黒ずみ)箇所がある場合は、雨漏りしている可能性があります。
一時的なものではなく、素材自体が常に湿気(水分)を含んでいると判断することができるからです。
しかし、「実際に雨漏りしているかどうか?」は、軒天を剥がして確認するか手で触ってみないと分かりません。
雨漏りしている場合、手で触ると素材自体が(水分を吸って)柔らかくなっているケースが多いです。
「軒天があまりにも黒くなっている(黒ずみ)箇所がある!」というかたは、(見積もりの段階で)雨漏りの点検までしてくれるのか?を確認してみてください。
契約前に確認しておけば、ほとんどの業者は無料で点検してくれると思います。
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3. 軒天のヒビ割れ箇所は交換するんですか?
軒天がヒビ割れしている箇所は交換ではなく、コーキングやパテ等でヒビ割れの補修(穴埋め)作業をするのが一般的です。
しかし、軒天が(真っ二つなど)完全に割れている場合は、交換(張り替え)することをおすすめします。
完全に割れてしまった軒天をコーキングやパテ等で強引に補修すると、(補修跡が目立ってしまって)塗装後の美観性が良くないからです。
軒天塗装の単価」に含まれる見積もりがされます。
軒天のヒビ割れ補修の費用は、大半のケースで「下地処理(調整)費」や「(関連記事)
最後に:軒天に劣化症状がある場合は屋根の点検を!
軒天塗装に使用する塗料の種類と単価相場について解説させて頂きました。
外壁塗装の見積書を確認する際、この記事の内容を参考にして頂けると幸いです。
(最後に)外壁塗装工事を行う際、軒天にカビや汚れ・シミ・藻などの劣化症状がある場合は、屋根の点検もしてもらうことをおすすめします。
軒天の劣化症状は、雨漏りの前兆(サイン)と言えるからです。
僕も工事のたびに屋根に登って点検をしますが、(雨漏りしていない場合でも)ほとんどの家は瓦にヒビが入っていたり瓦がズレていたりします。
優良業者であれば当たり前のように点検すると思いますが、(念のため)契約する前に「屋根の点検はしてもらえますか?」と塗装業者に確認してみてください。
ほとんどの業者は、無料で点検してくれると思います。
屋根の点検をしたうえで施工してもらえば業者側は”責任感”がでるため、きっと丁寧な作業もしてくれるはずです。
最後まで記事を読んでいただき、ありがとうございました。